佐野さんのタメ語を卒論で扱ったお話。

●はじめに。

こんにちは。こんばんは。初めまして。
ご来訪いただきありがとうございます😊


自己紹介もせずではありますが、この記事についてざっくり説明いたします。

・メインは言語学のおはなしです。
・私が自分で書いた卒論を理解し直すために書いています。
(大晴くんがおうちで関ジュのとき人に教えるのがいいって言ってたから…)
・めっちゃ長いです(そりゃ卒論+αだもん)
・佐野さんのお話は後半以降です。
・人間そんな理論的じゃねえ!と思われる方、そのとおりです。これが絶対的な正解なわけじゃありません。

でももし興味があれば、先行研究とかは飛ばしてもいいので、ちょっと読んでみて楽しんでもらえたらなあ、と思います😌

目次の作り方わからなかったので、とりあえず項目だけ載せます。

●はじめに。
●この分析、何が面白いのか。
●先行研究の紹介。
●扱ったデータについて。
●分析方法。
●結果。
●おわりに。

このようなかんじで書いてゆきます。

あと、これ身バレするんじゃ…と思い始めたんだけど、どうにかしてここにたどりついてしまった私のガチの知り合いがいたら見て見ぬふりしてくれ。笑


●この分析、何が面白いのか。

私がこの研究を始めたきっかけは、大好きなあるドラマの台詞がめっちゃ気になったからです。
職場で出会った年下と年上の恋愛ストーリーなのですが、年下さんが付き合ってからも基本的に敬語なんです。
でも、告白のときに突然「好きだ」とタメ語になったり、諸々あって別れを切り出すとき「俺は○○(相手)のことなんか好きじゃない」とタメ語になったり。それが不思議とものすごく刺さって、こういう一瞬のタメ語使用って言語学的にどんな効果を生み出してるんだろう……って思って、調べるようになりました。(この話題で1時間は語れる)

でもドラマって、いくら自然でも"人為的な会話"なので、自然会話での現象とは言いにくいんです。

なるべく自然会話で、このドラマのように”仲が良くて、でも基本的には敬語を使ってる人が一時的にタメ語を使うことがある関係性”に近い会話を探した結果たどり着いたのが……

【Aぇ内における佐野晶哉の発話】

だったというわけです。自粛期間の私、よくぞAぇに出会った。あっぱれ。


●先行研究の紹介。

この辺は思いっきり言語学の話なので眠くなってきたら飛ばしちゃってください🕊


まず、この分析をするにあたっていくつか語句の紹介をします。

スタイルシフト:発話のスタイルを変化させる現象(ここでは敬語⇔タメ語の変化)
ダウンシフト:敬語話者が一時的に発話のスタイルをタメ語に変化させる現象
アップシフト:タメ語話者が一時的に発話のスタイルを敬語に変化させる現象

なので、私が今回扱いたいのは、ダウンシフトが起こる場面、ということになります。

もう少し紹介。

ポジティブフェイス:相手と近づきたい、相手によく思われたい、という欲求
ネガティブフェイス:相手と距離を置きたい、私的領域に踏み込まれたくない、という欲求
ポライトネス:上記のフェイスを満たすための配慮
FTA(フェイス侵害行為):上記のフェイスを脅かす行為

なんかちょっとわかりにくいかもなんですが、そんなに重要じゃないのでスキップ。

あとは、人との距離を示すときに、この記事では、

垂直関係/水平関係:上下関係(上司と部下、先輩と後輩、年上と年下など)の有無
親密関係/疎遠関係:友好関係の有無

と呼んでいます。
例えば、佐野さんとAぇのメンバーであれば、垂直かつ親密関係、ってなかんじです。


語句の説明はこんなかんじ。次に、これまでにどんな研究が行われてきたかを紹介します。


まず、ダウンシフトに関する先行研究。
これは「(同等)初対面二者間会話」を扱ったものが多いです。
いうならば、「水平で疎遠な二者の会話」です。
会話の初めはお互いに敬語使用率が高く、会話が進むにつれてダウンシフトしやすく、タメ語使用が増えてくる、という結果がいわれます。その際のダウンシフトの効果としては、心的距離の縮小緊張緩和、が指摘されています。

(わかりやすい例が、みんな大好き『スカーレット』の喜美子と八郎ですね…。私はあの2人がお付き合いを始める前のあのソワソワする期間、どちらかがタメ語を使うたびに「ダウンシフトした…!!!」と盛り上がっていました。彼らはスタイルシフトによってものすごく上手に心的距離を調節していました。主観ですが。この話題で1時間語れる。)

また、ダウンシフトしやすい発話、ダウンシフトしづらい発話、というのを指摘した研究もあります。
まだそれほど親密ではない相手との会話で突然「昨日何してた?」って聞かれたら、ちょっと、え?ってなる人も多いんじゃないでしょうか。私ならなる。怖、ってなる。
逆に、「昨日なにしてたっけなあ」って発話なら、タメ語ではあるけれど初対面でも許容できるかなと感じる人が多いと思います。
こんなふうに、独り言っぽい発話や自分に関する発話であれば、疎遠関係であってもダウンシフトしやすい一方で、質問や命令のような相手に訴えかける、相手を巻き込むような発話は働きかけが強く、心的距離がまだ縮まり切っていない相手に対してはダウンシフトをしづらい、と指摘されます(発話形式でも発話内容でも相手に踏み込みまくるかんじになってしまうので、相手のネガティブフェイスを侵害する可能性が出てくるのです)。

とはいえ、全部が全部こういう傾向がみられるわけじゃないよ、例外もあるよ、とも先行研究は言っています。そりゃそうだ。


ちょっと視点を変えて、次は冗談を伝えるときのスタイルシフト、に関する先行研究を紹介します。
普段タメ語同士で会話している二者間会話の中で、冗談を言うときにスタイルシフトを起こしている、という分析結果がみられることがあります。わざと敬語を使ってみたり、キャラクターになりきった話し方をしたりすることで、ユーモアを生み出す、というわけです。
このとき、敬語を使用したからといって心的距離が離れているとか、緊張感を持たせるとか、そういった効果はもちろんなく、「いま私冗談言ってるぜ!ほら普段と違うでしょ!」っていうのを発話スタイルで表していると考えられます。また、こういった場合、前後にポーズをとったり笑いをはさんだりすることもよく観察されると指摘されています。


最後にもうひとつご紹介。
学校の先生たち同士の会話を観察した研究があります。ここでは、冗談を言うときや相手の冗談にノるときはタメ語を使い、仕事の内容を話すときや、冗談の会話を本筋に戻すときに敬語を使う傾向がある、ということを指摘しています。日常会話的に、そんなん当たり前やん、って思う方もいるかもしれませんが、ここから、敬語のもつofficialさ、formalさタメ語のもつunofficialさ、メインから逸脱している、といった性質を話者が認識していることがわかります。



あーーーーーーー先行研究紹介おわり!
みんな帰ってきてくださーーーーーーい!

さあ、ここまで読まれた方、気づきましたでしょうか。

そう、私が知りたい、「垂直かつ親密関係」のダウンシフトを扱った先行研究が、ない

そうなったら、自分でやるしかないよねえ。

ということでようやく始まります私の研究。


●扱ったデータについて。

今回扱ったデータは大きく分けて
1)2者間会話(さのすえ感謝電話/さのちぇ感謝電話)
2)3者間会話(アフター関バリ2回分)
3)6者間会話(コスプレ塾ワンちゃん4回分/大工さん4回分)
に分かれています。とはいえ人数の差については深くは触れていません(おい)。

データの選考理由は
佐野さんが強烈なキャラ付けなく、素に近い状態でしゃべっていること
です。コスプレはね…選ぶの難しかったよ…。

あ、あとこのあと具体例とか出てくるんですが、一応卒論は匿名でやっていたので、年齢順にA,B,C,D,E,Fって名前にしてます。佐野さんはF。


●分析方法。

どうやって分析したか、ですが、これは完全私のオリジナルなので、それ偏り出るんじゃね?って思ったらツッコんでください。

まずは佐野さんの発話の中から完全文(言い切り文)を抜き出します。
ここで「〜〜と思って」とか「〜〜だけど」といった中途終了発話文や、「ジャンプしたら無重力」「キャベツ」といった名詞句のみの発話は除外します。なぜなら敬語かタメ語かわからんから!
倒置が起こっているような発話は、倒置させていない状態で完全文であれば採用します。

次に抜き出した完全文を、文末表現をもとに敬語かタメ語かに分類します。
(比較のために敬語も分類をおこなっていきます)

2)と3)に関しては、その発話が誰かひとりに向けて言った発話なのか、全体に向けて言った発話なのかを分けます。

最後に、それらの発話を、内容をもとに以下の7つの分類に振り分けていきます。これがむずい。

(a) 同意・挨拶(相手からの反応を求めないもの)
(b) 自分に関する内容
(c) 第三者・場面に関する内容(内容が自分にも聞き手にも関係しない)
(d) 聞き手に関する内容
(e) 冗談(ボケもツッコミも含む、とりあえずふざけてるとき)
(f) 質問・確認(上昇イントネーション、相手からの返答を期待するもの)
(g) 提案・命令(相手からの返答や行為を期待するもの)

この7つの分類については、発話内容がどれだけ相手に影響を与えるか、を基準に影響力の弱いものから強いものを並べた、つもりです。
もし、初対面会話であれば、相手への影響力が小さい、項目の前半にあたる発話でのタメ語使用が多いはず、っていうかんじ。


●結果。

結果です。とりあえずこの表をご覧ください。

f:id:Yurie_pon:20210202103850p:plain
佐野さんの敬語/タメ語の使用回数一覧


はい。
お気づきでしょうか。
あんまりまとまりがないんです。

量的な傾向が出ないじゃんか!!!!!!
と私は一時的に荒れました。晶哉ちゃんめ、もっとわかりやすくタメ語使ってくれよ…と恨みかけました(ごめん嘘です)。

とりあえずこの表を見てわかる範囲の分析を2箇所だけしていきます。

(a)同意、あいさつ
この項目、圧倒的に敬語使用が多いんですよね。
でもこれって、相手からの返事を求めるわけでもないし、影響力の低い発話なので、先行研究的に言えば"ダウンシフトしやすい"はずなんです。
なんででしょう…というのは、あとの分析をしてから考えてみることにします。

(g)提案・命令
これも、圧倒的な敬語使用率
こっちは先行研究どおりといえます。
冗談めいた命令などは(e)に入ってるので、ここに含まれるのはあくまで佐野さん対メンバーという関係性での会話。なので、それで急に「せーやくん塩とって」とか言ってたら、え、家族?みたいになりそうですよね(完全にイメージが食卓になってしもた)。
敬語使用が多い理由、ここは、先行研究と同じく、相手への働きかけが強いからと言えるでしょう。


この2項目以外はパッとしないので、より深く内容を見ていくことにします!


(b)自分に関する内容
これは、相手への影響力が小さい、先行研究的にいえば"ダウンシフトしやすい"ものなのでタメ語使用が多いと考えられるんですが、数値を見ると敬語使用もまあまあ見られるのです。
じゃあその使い分けってあるんかいな、と、中身を見ていくとですね、

タメ語での自分に関する内容発話は、ひとり言的あってもなくても会話が進んでいくもの、という特徴あり。

(例1) さのすえ感謝電話の冒頭。6行目がダウンシフトしている。
01: A  もしもし.
    <Hello?>
02:   (0.7)
03: F  今 (0.5)大丈夫すか?
    <Is this a good time to talk?>
04:   (1.0)
05: A  うん. (0.3) 大丈夫.
    <Yeah. It’s okey.>
06: F→ よかった.
    <That’s good.>
07: A  どした?
    <What’s up?>
08: F  なにしてました?
    <What are you doing now?>
https://j-island.net/movie/play/id/5024

3行目や8行目の質問文は敬語発話であるのに対して、6行目だけダウンシフトしています。
ここで、6行目の「よかった」があってもなくても会話は大きな問題なく進んでいきます。

(ところで、卒論英語で書いていたのであえてそのままスクリプト置いていきますね…英訳できてるかな…有識者さん教えて……)


一方、敬語での自分に関する内容発話は、相手からの質問に対する答えなど、その会話を展開するために必須な内容、という特徴あり。

(例2)さのちぇ感謝電話。
(Before this conversation, D asks B what he is doing recently at home.)
01: D  何してる? 逆に.
    <What do you do recently?>
02:   (0.7)
03: F  僕, (1.2) ドラム,
    <I, practice drum,>
04:   (0.5)
05: D  うん.
    <Yup.>
06:   (0.5)
07: F→ オンラインレッスン (.) 受けてます.
    <I’m taking an online lesson.>
08: D  オンラインレッスンしてん. (surprisingly)
    <Are you taking an online lesson?>
09:   (1.5)
10: F→ めっちゃええっすよ めっちゃ楽しいっす.
    <It’s very good. Very exciting.>
https://j-island.net/movie/play/id/5190

7行目、10行目はD(たいちぇ)の質問に対する返答という発話行為を行っているため、なくなってしまうと会話が成り立たなくなってしまう要素。こういったときは、自分のことを語るとしても敬語使用のままであることが多くみられました。


(d)聞き手に関する内容
これは、相手のことを直接言及する内容なので、比較的影響力が大きい、"ダウンシフトしづらい"ものと考えられます。
でも数値を見てみると、「3者間/6者間会話で」「全体に向けての発話」のとき、タメ語使用率が高めなんです。
(実は6者間会話に関してはリモートか対面かでもわけて分析したんですが、リモートだけで見るとさらにタメ語率が高くなってますここ)

これも、タメ語使用がしやすい理由としては、(b)と同じく、ひとり言的、あってもなくても会話が進んでいく、という特徴があるためだと考えられます。
さらにもうひとつ、このとき、「会話参加者」という立場から一歩引いて「視聴者(の声の代弁者)」のように感じられる場面が多いんです。
…まあ、タメ語だからそうかんじるのか、本人がそれを意識してるからタメ語になるのか、どっちが先かわかんないんですけどね……。

(例3)大工さん(2)の冒頭。
01: E  空き時間で, ちょっと, さっき, 肉弁当を =
    <Because I ate a meat lunch … >
02: E  =食べさせていただいたので,
    < … during an intermission a while ago,>
03: E  そのぶん 働いて来ようと.
    <so, I will work more for that.>
04: C  [(laughing)]
05: B  [(laughing)]
06: C  休憩の代償を =
    <In return for that lunch …>
07: E  =めちゃめちゃ美味しかったんでちょっと, そのぶん.
    <It was so delicious that I have to do more for that.>
08:   (0.5)
09: C  じゃあもう, [ sss  ト]ップバッター頑張ってくださいそれは.
    <Okay, in that case, do your best as the first person.>
10: F→       [えらいな]
    <Well done!>
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5ef02cab-61f8-45ef-a9cf-6aeb4f50d390

(この肉弁当のくだり真剣な顔して英訳するのめっちゃアホらしかったです…ニュアンスが伝わらねえんだ……私絶対に小島さんのAぇ!!!!!!の文章の英訳だけはできない…)

ここで、メインの会話はCとE(もんビバ)で、佐野さんは傍観者的立場をとっています。また、この10行目の発話に対する反応も特にないですが、それが違和感なく受け入れられています。


(e)冗談(とりあえずふざけてる発話)
これは、影響力云々の前に、この発話ができるかどうか(親密じゃなかったら冗談言えないもんね)という視点もありますし、冗談言えるなら親密だしunofficialだしタメ語でしゃべるんじゃ?という視点もありますし、そもそも他の6項目となんかちょっと雰囲気違いますし、一緒にこれ分析すべきじゃなかったんじゃ?とも思いますし、

おすし🍣

はい。

とりあえず見ていきます。

冗談発話、タメ語が多めだけど意外と敬語のままのときもあります。
タメ語を使う理由は、タメ語話者が冗談のときにスタイルシフトをすると指摘していた先行研究のとおり(現象としては逆)だと考えられます。「この発話冗談だからね!」という合図を発話のスタイルによって行っているのでしょう。

(例4)正門さんのタンバリン大工終了後。
(C finishes his performance and returns from a studio putting a white mask.)
01: C  お疲れっした.
    <I'm back.>
02: F→ 仮面つけてよ.
    <Put your mask.>
03: A  仮面つけてって.
    <Put your mask!>
04: B  (laughing)
05: F  仮面つけてくださいよ.
    <Please put a mask.>
06: C  つけとるわ!
    <I'm putting it!>
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5efd8e55-8769-404d-941b-6bb048a20370

2行目で命令的発話をタメ語でしていますが、ここは実際と異なることをわざと言っているので冗談と判断しています。5行目で同じ内容を敬語で言っていますが、最初の発話をダウンシフトすることで冗談であることを示すことに成功した(3行目でせーやくんノッてくれたから成功と言える)から、5行目ではスタイルだけはもとに戻したのだと考えられます。

一方で、敬語を使用した冗談発話がどういうときに見られるかというと、 “わざとらしく垂直関係を生み出すような冗談”のときであるといえます。

(例5)小島さんのタンバリン大工終了後。
01: C  リーダー [よかった]
    <Leader, it was nice.>
02: B       [よかった]
    <Nice.>
03: E  つ (.)↑かれるねえこれやっぱ(affectedly)
    <Exhausted. This segment always makes me tired.>
04: F  [どうやって-]
    <How did you … >
05: D  [タンバリン]大工俺のや-=
    <Tambourine Carpenter is my idea.>
06: F→ =どうやって思いついたんですかあれ.
    <How did you come up with that character?>
07: E  え?
    <What?>
08: D  [タンバリン-]
    <Tambourine … >
09: F→ [どうやって]思いついたんですか.
    <How did you come up with that?>
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5efd8e55-8769-404d-941b-6bb048a20370

わざとらしく疲れている小島さんに悪ノリして、9行目では敬語を使用することで“小島さんを労わる後輩感”を出していると考えらます。

…いや、正直佐野さんのユーモアセンスを完全に分析する自信はないので、あくまで言語現象だけ見た場合です!正解の解釈はわかりません!


そんなわけで、数値的にパッと見特徴がわからなくても、中身まで見てみると傾向が見えてきたりします。楽しい。


ここで改めて全体の結果を振り返ると、垂直かつ親密関係におけるダウンシフトに関してこんな結論が言えるのではないかなあ、と思います。

初対面会話でのダウンシフトとは傾向が違う!
(そりゃそうだよ、だってもともと親密関係なんだから、心的距離の縮小効果を期待したダウンシフトをする必要ないもん)

ダウンシフトするときの会話では、聞き手との実際の関係性(=先輩と後輩)以外の要素を強調しようとしている!で、それを強調することによって発話内容を円滑に伝達しようとしていると考えられる。
(冗談発話では「遊び仲間」、誰かに言及するときは「視聴者(の代弁者)」、独り言的発話はそもそも聞き手を意識していないため先輩と後輩という関係性が生まれようがない)

逆に、実際の関係性を優先する発話の時には、相手への影響力の有無にかかわらずダウンシフトしづらい。
(最初、(a)で敬語使用率が高かったのはこれが理由だと思います。挨拶とかって、形式的でもあるし、その形式によって両者の関係性を色濃く示すため、ダウンシフトしたら失礼にあたってしまう可能性があるのかと。)



ふう。

ふう~~~~~~~~~~~~~~~~。
これが私の卒論内容でした!
晶哉ちゃん、Aぇのみんな、ありがとう。韓国の土下座しちゃう。



こっからは完全主観なおまけのお話。


おまけ①この結果を見た感想
佐野さんはよく、バラエティでの立ち回りがうまいってメンバーからも言われてるけど、まさにこのタメ語使用の傾向がそのとおりだなと思ったんです。
タメ語を使うことで自分のその場その場での立ち位置をわかりやすく示しているというか。
考えすぎかなあ。

おまけ②最近の佐野さんのダウンシフト
ここまで詳しく分析はできてないけれど、最近のダウンシフト、このときとはちょっと違ってきている気がします。
例えばコスプレ塾のどうぶつ編(2)の前編。末澤ウサギのニンジン早食いの感想述べるときの佐野さんの発話。

「全然めっちゃ普通に鳴くか、まったく音鳴らんくなるか、の、二択やったのよ

この発話。
ここでダウンシフトするんや!って初見のときはびっくりしてました。
これって、特にキャラクターになりきってるわけでもない、佐野晶哉のまんま、メンバーに向けた、発話だと思うんですよ。で、冗談要素もなく(いや、ないとまでは言い切れないけど)。分類的に言うと末澤ウサギについての描写だから(d)に含まれるけれど、メンバーの視線が佐野さんに向いているし、聞き手への呼びかけの効果がある終助詞「よ」がついているし、視聴者の代弁とも思えない。完璧なまでの“ただのメインの発話”なんですよね。
これは……どう分析したらいいのかなあ、と思ってます。でもなんとなく感じているのは、この傾向が続くようであれば、これからどんどんタメ語増えていくのかなあ、っていうこと。なんかちょっと寂しい気持ちがしています。全然、いいんだけど、ちょっと寂しい。


ほんとはみっつめのおまけで、先日(2021/01/30)のらじらー内コーナー「晶哉、タメ語で喋ろうや」を分析した結果を書こうかと思ったのですが、まだ分析途中なのと、あんまりにも長くなるのでまた別の機会に書きます。今週中には書きたいなあ(自分を追い詰めていくスタイル)。


●おわりに。

……ここまで読んでくださった方、ほんまにありがとうございます。
長かったでしょ…私も疲れたよ……。
もちろん至らない点、無意識のうちに偏った視点で分析しているところがあるかもしれません。お手柔らかに。でも気づいたことがあればご意見ほしいです。
ひとまず書き始めた目的、自分が理解する、は達成したので、あとは読んでくださる方に伝わるかな…ということだけが課題です。
(伝わる≠納得してもらう、です!これが正解だぞと押し付けるつもりはありません。読んでくださった方が、こういう分析方法も一理あるなあ、くらいに思って下さったら嬉しいです😊)

もしなんかご意見とかご質問とかご指摘とかあったらマシュマロとかコメントください!



ではまた。気が向いたときに、思い出したようにつらつらと書きに来ます。
ありがとうございました!



[参考文献一覧]
Allott Nicholas (2014)『語用論キーターム事典』開拓社, 東京
Brown,P & Levinson, S.C. (1987) Politeness: some universals in language usage. Cambridge University Press, Cambridge.
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Geyer Naomi (2008) “Interpersonal functions of style shift: The use of plain and masu forms in faculty meetings”, Style Shifting in Japanese, John Benjamins Publishing, 39-70, Amsterdam.
Kitamura Koichiro (2019) “An Analysis of Linguistic Politeness in Japanese: A case Study on the Management of Polite Form among Young Japanese People in Australia”, Global communication studies 8, 137-158. Chiba.
大津友美(2007)「会話における冗談のコミュニケーション特徴:スタイルシフトによる冗談の場合」『社会言語科学』10巻1号, 45-55, 東京
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滝浦真人(2005)『日本の敬語論 - ポライトネス理論からの再検討』大修館書店, 東京
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https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/politeness-theory/
和田朋子(2020)『[増補改訂版]はじめての英語論文 引ける・使える パターン表現&文例集』すばる舎, 東京
ユン・ドングン(2014)「日本語のスピーチレベルシフト実例分析-ドラマスクリプトを用いて-」『一橋日本語教育研究』2, 107-118, 東京

Source of examples (accessed 2021/01/04)
https://j-island.net/movie/play/id/5024
https://j-island.net/movie/play/id/5190
https://j-island.net/movie/play/id/5243
https://j-island.net/movie/play/id/5630
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e4fb4e7-d13c-4002-ae40-defa3caa2adb
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e4fb4ef-681a-4f97-8ea8-c0a43042572c
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e61ba27-22a0-4d10-8ea5-42dc5fb9c198
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e61ba41-5466-483e-9e54-9cd772d22639
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5ef02cab-61f8-45ef-a9cf-6aeb4f50d390
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5ef02cbd-f8cb-4186-806c-4cfd3fc078ce
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5efd8e43-159d-4f16-8b46-1ddf6f102ad2
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5efd8e55-8769-404d-941b-6bb048a20370
※You can access them until March 31, 2021.

なんか、GYAOのリンクがうまく飛ばないかも…コピペしたら見られると思います…