”分析したい”という愛情表現もあるんだよっていうお話。

 
●はじめに。
 
こんにちは。こんばんは。
どうも、書く書く詐欺の常習犯です。
ご来訪いただきありがとうございます。
 
これまでのはてブを読んでくださってる方や、普段の私のツイートを知ってる方などはわかると思うのですが、私はAぇさんはじめ関ジュが好きで、セクゾさんやWESTさんも好きで、お芝居が好きで、遣都くんや洸平さんが好きで(小声)、そして何より
 
言語学が好きな人間です。
 
とはいえ言語学ってマイナーな学問なので、何が好きなん?何が面白いん?って方も多いと思うのです。
 
Aぇ担さんだったら、とりあえず私の過去のはてブ読んでいただければ少し言語学という分野が身近になると思います☺(宣伝)
 
そんなわけで今回は、自己紹介もかねて(3度目の投稿にして自己紹介…)言語学が日常やオタ活にもたらす楽しさや弊害(笑)をゆるっとお話ししてみようかなと思い、この記事を書き始めました。
目標は、これを読み終わったあと、オタクのやり方って多種多様なんだな〜こういう人もいるんだな〜と面白がってもらうことと、ちょっとでも言語学を身近な学問にかんじてもらうことです!
(これなんのはてブなん?)
 
これを読んでくださったあなたが、ちょっとした新しい発見をした気持ちになってくださいますように
 
 
●好き=分析したい、の感情。
 
テレビの中の人、舞台の上の人、大学の友人、などどんな関係性であれ、「この人好きやなあ」となることはたぶんみなさんあると思います。
人ではなくても、ドラマや映画、舞台演劇などで「この作品心に響くなあ、好きだなあ」と思うこともあるでしょう。
好きな人、好きな作品に対して、みなさんはどんな感情を持つのでしょうか。
 
私は、
「あ〜この人好きやなあ、分析したい
「あ〜この作品素敵やったなあ、分析したい
となります。
自分で客観的に見ても、変態的だなと思います。はい。
 
そもそも私が好きになるタイプが、言葉に対する感性が繊細でいるような人や、言葉遊びが繊細に行われている作品のことが多いので余計に、というのもありますが、とにかくほぼ例外なく私はこれです。
 
そして実際に分析してしまいます。
なんなら大学のレポートにガンガン使わせていただきました。
好きな人本人が本人としてお話されている動画やラジオを使用することもあれば、ドラマや演劇の戯曲を使用したこともありました。
 
とにかく好きなので、分析は苦になりません。
ニヤニヤしながらレポート書けるなんて、大学生の鑑です自分で言うな)
 
好き推し愛してる、ほど大きな感情でなくても気になったらまずは文字起こししてみちゃう、ということもあります。
例えば、西畑さんとかまさにそれで(いやもちろん好きなんだけど)。
去年の#なにわにQを見ていたとき、西畑さんの語りかけ方がとてもやわらかくて身近なかんじがしたんです。これがいわゆる「恋人にしたい」の所以なのかもしれないなと思いながら、私はそこにキュンとするよりも
 
やわらかくて身近なかんじがする要因はどこに隠れているんだろう
 
が気になってしまうんです。
もっと直感に従って生きたほうが楽しいかもしれないですね。
 
ちなみにこれ、文字起こししただけで満足して終わっちゃってるので、いつかやる気が出たら分析したいなと思っています。やる気が出たら。(4月から社会人ですけどなにか)
 
 
●人の会話を聞いてるだけで楽しい。
 
私は言語学の中でも、音声学や音韻学などの小さい単位を扱う分野ではなく、会話分析だったり語用論といった、発話、文のしくみなどを扱う授業を多く取っていたこともあり、人と人との会話の中で起こる現象を観察するのが大好きです。
 
たとえば、
・スタイルシフトの場面
(発話のスタイルを変化させること。敬語話者が一時的にタメ語を使用することをダウンシフト、タメ語話者が一時的に敬語を使用することをアップシフトと呼ぶ。私の卒論テーマ。)
・ターン交替の場面
(発話の順番がどのようにまわっていくか。間が生まれることもあれば、オーバーラップすることもある。重ならずテンポよくターン交替が行われないとき、その原因はなんだろう?と気になってソワソワする)
アイロニー(皮肉)発話
(字義的意味と伝達内容になんらかの乖離があるような発話(諸定義あり)。直接的に言わないことによる効果はなんだろう?相手にそのアイロニーは解釈されているのか?など気になってしまう)
・誤解、勘違いが生まれる場面
(話し手の伝達ミスか、聞き手の推論ミスかによって伝達内容が正確に伝わらない場面。必要な量の情報が伝えられたのか?話し手の発話からどういった推論を働かせたのか?どの部分で勘違いがうまれてしまったのか?と原因究明したくなる)
・いわゆる若者言葉、辞書に載っていない表現
(「この動画さのすえがさのすえしてる」のような表現、文法的には不明瞭だけど言わんとすることは伝わりますよね(たぶん)。あとは、「普通に美味しい」の「普通に」はなにを示しているのか、とか、辞書的意味から逸脱した使用がなされている表現を見ると可能な限りメモして分析したくなっちゃう)
 
などなど………
これ以外にもある気がしますが、主にはこんなところですね。
特にスタイルシフトは、あらゆるコンテンツを見ながらニヤニヤします(私のついったー参照)
 
本当は心理学とかも勉強していたらもっと多角的に楽しめるのだとは思うのですが、あくまで私は言語学の浅い知識しかないので、実際の話し手の意図が正確にわかるわけではないです。
 
でも、正しいだけがゴールじゃないんですよね。
楽しいもんは楽しい。
それだけ。
 
 
●ちなみに。
 
ブレイクタイムついでに言い訳をします。
 
言語学は"(目の前にある)言語現象を分析する"学問です。いや、正確にどうかは知らんけど私なりの意識はこれです。
 
なので、"言語学専攻=語彙が豊富"という認識をされている方がいたら、それはおそらく間違いです。
語彙力?そんなん構築する授業なんて受けたことないわい。あるなら受けたいわい。
 
はい、ブレイクタイム終わり。
 
 
こっからは弊害をご紹介します。笑
たぶん他人事だと思って読む分にはめっちゃ笑える話なのでご安心ください😳
 
 
●人と喋るのが下手になった。
 
これは言語学を深めていくうえで思わぬ弊害でした。
 
まあもともと人見知りするほうではあって。
その場限りの関係性だったらスラスラ喋れるんですが、"これからも関係が続いていくかもしれない"人と話すのはそんなに得意じゃなかったんですよね、たぶん。
 
それが、言語学を学び、悪化しました
 
原因は至ってシンプルで、自分の発話内容がもたらす効果について必要以上に考えてしまうから、です。
 
今ここでターンを取って平気かな?
ダウンシフトしたら失礼にあたるだろうから中途終了発話にしなきゃ。
バックグラウンドが違う相手だけどどこまで説明しながら話したほうがいいかな?説明不足で伝わらないのも困るけど、説明しすぎるのも失礼にあたるよな。
あれ、今の相手の間はなんの意図だろう?
今のってアイロニー的発話だったな、もしかしてこの話題気に触ってしまったのかな?
 
もう考えだしたらきりがない。
私は関係が続いていく人に対して、好かれたい仲良くしたい近づきたい、みたいな積極性をもって会話しているわけではなくて(それはゆくゆくでいいので)、とにかくマイナスに思われたくない失礼に値する発言をしたくない無でいたい、みたいな心持ちなんですよね。シーソーをちょうど平行に保ってたい、みたいな。
 
んで、結果、とても人見知り(してるふりをして相手の発話を注意深く観察している大人しめ)な人間になってしまいました。
 
言語学を学んだことによって苦しめられてしまうなんて、状況的アイロニーの一種ですね。(これが私の通常運転)
 
 
●人の話やお芝居の内容が頭に入ってこない。
 
いや、聞いてるんですよ!?聞いてるんですけどね!?
ただ、上記したように常にいろんな言語使用の方法が気になるんですよ。で、なにか見つけてしまうと、その場で分析したくなってしまって。でも相手はもちろん話を続けているわけなので、結果として私の脳内が置いていかれてしまうという。
 
…完全に私が悪いな。すみません。
 
 
●変なタイミングでニヤニヤしてしまう。
 
これを読んでくださっている方はアイドルファンしてる方が多いのかなあと思うのですが、みなさん、自分の推しのどんな発言を聞いたときにニヤニヤしますでしょうか(質問が雑)
おそらく定番は胸キュン台詞、とかなんじゃないでしょうか。いや定番とか知らんけどね。決めつけるわけじゃないので気を悪くしないでくださいませ。
 
私は、
推しが年上の人との会話でダウンシフトしたら、公共の場で容認されないレベルでニヤニヤしてしまいます。
 
大抵ひとりで動画やラジオを楽しむことが多いので、まあ問題ないっちゃないんですが、「ねえこの動画のここ見て!!ダウンシフトしてるの!!やばい!!」みたいに友人にLINEをしても、あ〜…で?みたいなかんじになりお互い、あれ?みたいな空気になります。
申し訳ない。でも私にとって年上へのダウンシフトはどんなキザな台詞よりもドキッとして苦しくなってしまうのだよ。
 
というわけで、引かれます。
 
 
●文末の括弧書きを多用してしまう。
 
このブログ内でも相当使っていると思います。
喋るのが下手になったのがspeaking面の弊害であれば、writing面での弊害がこれです。
LINEやついったーで括弧書きを使わずにはいられないのは、顔の見えない相手に確実に自分の発話に含んだ伝達内容を届けるた、です。
直接話すときであれば声のトーンやスピード、視線など表情を加味して聞き手は推論をはたらかせることができますが、文字だけのやり取りではそれができない。であれば推論の過程で間違いが起きる可能性が高くなる。
 
Grice(1967, 1975, 1989)は、会話において、4つの格率がまもられるべきだとまとめています。
1. 量の格率
→必要なだけ十分な情報を与えるべし、必要以上には与えるな。
2. 質の格率
→嘘は言うな、証拠のないことは言うな。
3. 関係の格率
→関係あることを言うべし。
4. 様態の格率
→わかりにくい表現や曖昧さは避けよ、簡潔に、順序よく情報を提示せよ。
 
でも、地の文でこれを完全に守ろうと思ったら、めっちゃ堅苦しくなるじゃないですか。
でも、勘違いされたくない。
 
となって、結果、括弧書きを多用してしまうことになります。
おかげで私の文章はいつも長文です。
 
 
●おわりに。
 
そんなわけで長々と、私の日常について書き連ねてきましたが…
 
あれ?なんか弊害のが多くない???
待って!言語学って楽しいから!!ね!!!
 
弊害、なんて書いてしまってますが、生きていくうえで困りはせんくらいのものなのでね、もう全然平気ですよ。
それより推しを分析する楽しさが勝ってしまうし。
 
 
余談ですが。
私の中で、「好き」がどういう感情なのか、よくわからなくなるときがあります。
でも、言語学やってて新しい発見あると嬉しくなるし、誰かに教えたくなるし、また新しいことを知りたくなる。
おんなじように、たとえばAぇさんだったり、役者さんだったり、作品だったりに対して、新しい何かを見つけるとすごく嬉しくなるし、次の活力につながる。
そう思うと、私の中での「好き」って「好奇心」に近いのかもなあ、なんて思ったりします。
 
これって、いわゆる世間一般が思い描く(そして、求められている、のかもしれない)ドルヲタの姿ではないのかもしれないですね。
最近よく、自分はアイドルを応援するのは向いていないんだろうなあ、と感じることが多いのは、こういった「好き」の違いを感じる場面があるからかもしれません。
 
でもやめるつもりはないので。
これが私なりの、好きな人や好きな作品への愛情表現です。
 
 
 
 
………結局これなんのはてブだったんですかね。笑
理論的な文章になっているかすらわかりません。笑
よくわかりませんが、楽しんでいただけていたら幸いです🙌
 
 
ではまた。気が向いたときに、思い出したようにつらつらと書きに来ます。
ありがとうございました!
 
 

「晶哉、タメ語で喋ろうや」から心的距離と文末表現について考えたお話。

●はじめに。

こんにちは。こんばんは。
初めましての方。二度目ましての方もいらっしゃるかもですね。
ご来訪いただきありがとうございます。

ざっくりとこの記事について説明します。

・メインは言語学のおはなしです。
・相変わらずこれは自分のための書きもので、考えを押し付けるものではありません。
(じゃあ公開するな!という方。それも一理あります。自己満足にすぎません。)
・まだ完成ではありません。のちのち書き足していくつもりですが、聞き逃しがあるうちにまず記事をあげようと思った次第です。
・この記事単独でも楽しんでいただけると思いますが、前回の記事のおまけとして書いているので、前回説明している用語などを出しているかもしれません。
 

yurietty-pon.hatenablog.com

↑前回の記事です。気が向いたら読んでみてください。
 

いまだに目次の作り方を学んでいないアナログ人間です。
以下に項目だけ載せます。

●はじめに。
●前回のあらすじ。
●扱ったデータについて。
●分析方法。
●結果。
●終わりに。

このようなかんじで書いてゆきます。


●前回のあらすじ。

先日、佐野さんのタメ語についてのブログを書いたところ、たくさんの方に読んでいただきました。
読んでくださった方、本当にありがとうございます。

とはいえまだまだ研究不十分。卒論が終わっても佐野さんのタメ語を追っていきたい…と思いながら聞いていた、2021年1月30日の『らじらー!サタデー』の中の1コーナー。

~晶哉、タメ語で喋ろうや~

私このコーナー作ったっけ!?

と焦るくらい私にぶっ刺さる企画が爆誕していたわけです。

こんなん、分析せずにどうすんねん、ということで、さっそくチャレンジしてみました。
 
●先行研究。
 
というか、語句の説明ですね。
前回と違うアプローチを行ってみるので、その説明をちょこっと。
 
今回は、会話分析の手法を用いて、発話の数を数えてみます。
 
ターン:発話の順番
完了可能点:1つの発話順番が終わるぞ、というのが聞き手に伝わる箇所
順番構成単位(TCU):完了可能点を迎え、1つの発話順番を構成することができる言語的単位
移行適切場(TRP):順番交替が生じる可能性がある場所(ひとつのTCUが完了可能点に到達するとき、原則としてそこがTRPである)
反応機会場:TCUの内部に現れる、聞き手が反応してもよい場所
 
……みなさん、完了可能点と、移行適切場と、反応機会場の違い、伝わりますか……?
私はいまだに、どゆこと?となることがあります。間違ったことを書いていないか不安です。
 
TCUは、文法的に完全でなくても、節や句、語のみでもなりうるのが特徴です。
発話者が「これで自分の発話終わりなんで!次誰かしゃべってええよ!」となるタイミングで1つのTCUが生まれる、というかんじです。
 
自然会話でトークを"まわす"人がいなくても比較的スムーズに会話ができるのは、無意識に完了可能点を迎えたことを察知して、次のターンを取る、というふうにしているためです。
 
しかしながら、TCUって拡張することがあるんですって。
ややこしいのでここでは飛ばしちゃいます🏌
 
TCUというのがひとつの発話のまとまりではありますが、反応機会場ではTCUの途中で聞き手が理解しているかな?話伝わってるかな?と確認することができる場所ってかんじ。
聞き手は、反応機会場であれば、TCUが最後まで終わらなくても(完了可能点に到達する前に)、なにかしらの反応を示すことが可能になります。
 
私も書いててよくわからなくなってきそうなので、実際のデータを見ながら改めて考えてみます!


●扱ったデータについて。

改めましてにはなりますが、今回扱ったデータを紹介します。

2021年1月30日放送のNHKラジオ第一『らじらー!サタデー』にて、MCの浜中さんとゲストの佐野さんが、先輩後輩を気にせずタメ語で喋ってみようというコーナー、「晶哉、タメ語で喋ろうや」内の2つのエチュードと呼ぶことにします)を分析していきます。


(A)テーマは、「二人で遊びに行くならどこへ行きたいか」。
エチュードの長さは約1分47秒。
両者の関係性は「ほんまにめちゃ仲いい友だちぐらいのタメ語」を使用する者同士であると指定されています。

(B)テーマは「目玉焼きにはなにをかけるか」。
エチュードの長さは約1分36秒。
両者の関係性は「仲良くしてもらってる先輩に対して、ちょっと敬語抜けてきてるな、くらい」な後輩を佐野さんが演じています。


ここで、このふたつのデータを比較するにあたり個人的にどこが美味しいか(食うな)を紹介します。

データの長さがほぼ同じ
→これは比較しやすい。トーク内の話題がどれくらい展開していくかを観察するにもいいなあとおもったところ。

心的距離が違うということを明確に示している

…いや、ここよ、ほんま。

データの長さとか書いたけど正味ここよ。このデータの面白さ。

あくまで想像の範囲にすぎませんが、事前に"相手との心的距離がめっちゃ近い/敬語やめられるくらいは近づいている"を意識してエチュードを行うということは、その発話者が普段それらと同等距離にあたる人物に対してどのように話そうとしているのか、という意識が見えてくるはず、と考えました。


●分析方法。

先行研究の部分でもちょこっと説明していたとおり、まずTCUという単位で発話をわけていきます。
(TCU=発話、と変換すると読みやすいと思います😊
次に、TCUの内部に反応機会場があるものに関しては、そこでも小単位として区切っていきます。
 
続いて、それぞれの文末表現の特徴をピックアップしていきます。
 
また、音声的な特徴についてもみていきます。
発話のスピード、強弱、文末の下降/上昇イントネーションなど、目立ったものを中心に比較材料にしてみることにします。
 
 
なんせ分析期間数日の覚え書きなので、みなさんが気づかれたことあったらどんどんマシュマロ投げてください。

●結果。

・TCUの数
まずは両エチュードでの佐野さんのTCUの数です。
(A)のTCU…38個(1つのTCUにかかる時間平均約2.8秒)
(B)のTCU…20個(1つのTCUにかかる時間平均約4.8秒)
 
けっこう差が出ました。
会話のテンポ感が(A)のほうが速いことが分かりますね。
私もびっくりしてます😳
 
・反応機会場の数
次に1つのTCUに含まれる反応機会場の数です。
(A)の反応機会場(/1つのTCU)…平均1.24個
(B)の反応機会場(/1つのTCU)…平均1.52個
 
微妙な差ではありますが、TCUの数も踏まえて考えると、(B)のときはひとつのTCUをところどころポーズをとりながら、相手の反応を見ながら発話していることが数値からみえてきます。
 
 
・文末表現の特徴について
ここでの文末は、TCUごとに見てゆきます。
これ、個人的におもしろかったです(感想)
 
(A)は、特に後半、完全文の言い切りが多くありました。
 
(例1)
01: F >あでも俺<文ちゃんとカラオケ行きたい.
02:   (1.7)
03: H .hhhh
04:   (0.4)
05: F 文ちゃんカラオケ↑行こうや::.
06: H カラオケ行く:?=
07: F =歌聞きたいやん文ちゃんの.
08:   (0.5)
09: H ゜あ::[:゜]
10: F     [大]好きやからさ:.
11: F 知ってるやろ?
12: H あ:::[ : ]      [あ : : : : ]
13: F     [文]ちゃんの歌[大好きなん]
 
(会話例内の記号について、このブログの一番最後に一覧載せておきます!)
 
こことかね。
畳みかけというかテンポ感もすごいんですけど、文末を見てみると、
「や」や「さ」で強調することはあっても、文末を和らげている印象はあまり感じられません。
発話行為を見てみても、勧誘したり、自分の気持ち述べたり、質問形使ってみたり。
浜中さんの返事の隙を与えずどんどん突撃しているかんじがします
 
 
一方の(B)ですが、こちらは対称的に、文末を和らげようとしている表現が多々見られます。
 
(例2)
01: F ヨコ::>が目玉焼き食いに行こうって言うならもう<僕は::::ねえ.
02: H .hhうんhh
03: F そりゃ::(0.4)喜んでついてく[::::]:↓けどなあ.
04: H                [¥うん¥]
05: H hhうん=
06: F =ヨコ一枚じゃ済まんから::.
07: H huhahhahha[ h a h h ]
08: F       [美味しいって]言っちゃったら=
09: F =いっ[ぱい出て来]ちゃうからヨコ.
10: H    [hahhahha]
11: H haahhahha[hhha]
12: F      [まあえ]えとこでもあり悪いとこでもあるんやけど.
 
この辺ですね特に。
「けどなあ」、「から」、「やけど」などを使いながらあくまで自己意見の姿勢を貫いた発話を続けています。
浜中さんからの返答がないのは先ほどの(A)と同じですが、こちらでは佐野さんは話を新たに展開しようとせず、語りかけや強調の助詞を付与することもなく進んでいます。
 
また、3行目の文末に着目すると、「ついてく::::」と文末に到達する直前の音を伸ばしており、「↓けどなあ」と語尾は少しトーンを下げていることがわかります。
これも、文末表現の選択に迷いがある表れだと考えられます。
文末表現選択の迷いに関しては同様の現象がエチュード前半でもみられます。
 
もうひとつ、9行目にも注目してみましょう。
文脈的に「ヨコ」(=横山さん)の話をしているのは明らかであるのにあえて文末に倒置法的に「ヨコ」と付与しています。
これと同様の、倒置法的現象が(B)エチュード内にいくつか出て来ます。
(「美味しいとは言えへんかなヨコの前でも」や「美味い!って言いながらもうお腹いっぱいぐらいな、ジェスチャーでやるかな俺は」など)
 
倒置法をすることによる最も大きな変化は、文末表現が文末に来ないことだと考えられます。
つまりこの現象も、文末表現を避ける手段として用いられているのではないかと思われるのです。
 
・その他
上記のエチュードの断片を説明するときにも少し触れましたが、(A)は浜中さんからの問いかけに答える際に確認や質問を交えながら進んでいくのに対し、(B)は基本的に自分の意見を述べるだけにとどまっています。
……前回の私のはてブで先行研究のところまで読んでくださった方、なにかピンとくるものがありませんか…?
 
”独り言っぽい発話や自分に関する発話であれば、疎遠関係であってもダウンシフトしやすい一方で、質問や命令のような相手に訴えかける、相手を巻き込むような発話は働きかけが強く、心的距離がまだ縮まり切っていない相手に対してはダウンシフトをしづらい、と指摘されます”
 (2021/02/02 『佐野さんのタメ語を卒論で扱ったお話。』より

 

(引用の使い方これで合ってるんかな…はてなブログわかんない……)
 
まさにこの先行研究が指摘したことがここで起こっていると考えられるのです。
 
 
とまあ、こんなかんじに、らじらーの1企画を言語学的に分析した結果でございます。
楽しい。楽しすぎる。
 
 
改めて全体の結果を振り返ると、心的距離の違いと発話の特徴について、こんな結論が言えるのではないかなあ、と思います。
 
心的距離が縮まるとダウンシフトできる発話内容が増える、という先行研究を、今回実例を用いて証明できた。
もしかしたら少し言い過ぎかもしれないので要検討ではあるけれど、TCUの数や発話行為を観察すると、心的距離が近いほうが「会話を展開させる」回数が多いと言えるのではないか?)
 
文末表現による聞き手への働きかけの強さを、発話者はきちんと意識している
(特に(B)で感じたことです。「かな」「けど」を使用したり、文末に到達する前に音を伸ばしたり、倒置法を用いて文末表現が文末に来ないようにしたり、さまざまな手段で働きかけを弱めようとしているのが読み取れます。)
 
心的距離が離れているほど、聞き手への働きかけの強さがFTAフェイス侵害行為)になる可能性があると意識して、働きかけの力を持っている文末表現や質問などの発話行為を避けている
(仲良くなりたいからこそ相手の気分を害さないように、円滑に会話を進めるために言葉を選んでいる、っていうのがこういう言葉で言い換えられるのかなと。)
 
こんなかんじです!!!!!!
ざっくりと。
 
 
おまけ。
これね、私がどうして分析したかったかっていうと、前回の卒論の裏付けをしたかったからなんです。
 
私はAぇさんを知ってまだ1年も経ってないファン見習いなので、前回の分析のときは「一緒のグループで活動している=親密関係」という思考で心的距離を断定してしまっていました。
でも本当は、彼らが一緒に活動するようになってからそれほどめちゃめちゃ長いとも言えないんですよね。
そもそもこちとらただのファンなので、メンバー同士の心的距離の変化がどれが正解かわからない。親密っぽくみせてるだけだと言われてしまえばそうですか…と言うしかない。わかりっこないことです。
 
今回の分析は逆に、架空の設定ではあるけれど心的距離をあらかじめ決めてあるエチュードでした。
ここから佐野さんの言語使用に対する意識を読み取ることができれば、卒論で扱った内容が「垂直かつ親密関係である」という断定をする要素になるんじゃないか、と考えました。
 
結果として、前回扱った佐野さんとAぇの会話におけるダウンシフトの特徴は、今回の(A)に近かったと言えると思います。
質問だってしてたし、ダウンシフトするとき文末表現で迷うような現象、ほとんどなかったもん。
 
というわけで、言語使用の意識として、佐野さんはAぇのメンバーに対して、心的距離が近い親密関係の相手に向ける方法で会話をしていると言ってもいいんじゃないかなあ。
ま、卒論には間に合わなかったんですけどね。ただの好奇心でした。
 

●終わりに。
 
最後までたどり着いてくださったみなさん。
本当にありがとうございます🙇
毎度毎度疲れさせてしまってすみません…
 
前回よりもだいぶアバウトな分析であることは自覚しています。
(そりゃ1週間で卒論並みの分析してたらヤバい。)
とりあえず!です。きっとたくさん追記します。もしよければまた1か月後くらいに読みに来てください。
 
そしてまたマシュマロ設置しますので、ご意見ご感想マジレスなんでも投げてください。どんどん参考にさせて頂きます。
 
 
 
ではまた。気が向いたときに、思い出したようにつらつらと書きに来ます。
ありがとうございました!
 
 
[参考文献]
串田秀也・平本毅・林誠(2017)『会話分析入門』勁草書房, 東京
 
(会話例内に使用される記号について)
[ ]  発話の重なり
=    前後の発話が区切れなく続いている
(数字) 沈黙の秒数
::   直前の音が伸ばされている
.   下降イントネーション
?   上昇イントネーション
↑    直後の音がそれまでと比べて高くなっている
↓    直後の音がそれまでと比べて低くなっている
゜文字゜ 弱い発話
hh   息を吐く音。笑いを示すこともある。
.hh   息を吸う音。笑いを示すこともある。
>文字< 発話のスピードが速まっている
 

佐野さんのタメ語を卒論で扱ったお話。

●はじめに。

こんにちは。こんばんは。初めまして。
ご来訪いただきありがとうございます😊


自己紹介もせずではありますが、この記事についてざっくり説明いたします。

・メインは言語学のおはなしです。
・私が自分で書いた卒論を理解し直すために書いています。
(大晴くんがおうちで関ジュのとき人に教えるのがいいって言ってたから…)
・めっちゃ長いです(そりゃ卒論+αだもん)
・佐野さんのお話は後半以降です。
・人間そんな理論的じゃねえ!と思われる方、そのとおりです。これが絶対的な正解なわけじゃありません。

でももし興味があれば、先行研究とかは飛ばしてもいいので、ちょっと読んでみて楽しんでもらえたらなあ、と思います😌

目次の作り方わからなかったので、とりあえず項目だけ載せます。

●はじめに。
●この分析、何が面白いのか。
●先行研究の紹介。
●扱ったデータについて。
●分析方法。
●結果。
●おわりに。

このようなかんじで書いてゆきます。

あと、これ身バレするんじゃ…と思い始めたんだけど、どうにかしてここにたどりついてしまった私のガチの知り合いがいたら見て見ぬふりしてくれ。笑


●この分析、何が面白いのか。

私がこの研究を始めたきっかけは、大好きなあるドラマの台詞がめっちゃ気になったからです。
職場で出会った年下と年上の恋愛ストーリーなのですが、年下さんが付き合ってからも基本的に敬語なんです。
でも、告白のときに突然「好きだ」とタメ語になったり、諸々あって別れを切り出すとき「俺は○○(相手)のことなんか好きじゃない」とタメ語になったり。それが不思議とものすごく刺さって、こういう一瞬のタメ語使用って言語学的にどんな効果を生み出してるんだろう……って思って、調べるようになりました。(この話題で1時間は語れる)

でもドラマって、いくら自然でも"人為的な会話"なので、自然会話での現象とは言いにくいんです。

なるべく自然会話で、このドラマのように”仲が良くて、でも基本的には敬語を使ってる人が一時的にタメ語を使うことがある関係性”に近い会話を探した結果たどり着いたのが……

【Aぇ内における佐野晶哉の発話】

だったというわけです。自粛期間の私、よくぞAぇに出会った。あっぱれ。


●先行研究の紹介。

この辺は思いっきり言語学の話なので眠くなってきたら飛ばしちゃってください🕊


まず、この分析をするにあたっていくつか語句の紹介をします。

スタイルシフト:発話のスタイルを変化させる現象(ここでは敬語⇔タメ語の変化)
ダウンシフト:敬語話者が一時的に発話のスタイルをタメ語に変化させる現象
アップシフト:タメ語話者が一時的に発話のスタイルを敬語に変化させる現象

なので、私が今回扱いたいのは、ダウンシフトが起こる場面、ということになります。

もう少し紹介。

ポジティブフェイス:相手と近づきたい、相手によく思われたい、という欲求
ネガティブフェイス:相手と距離を置きたい、私的領域に踏み込まれたくない、という欲求
ポライトネス:上記のフェイスを満たすための配慮
FTA(フェイス侵害行為):上記のフェイスを脅かす行為

なんかちょっとわかりにくいかもなんですが、そんなに重要じゃないのでスキップ。

あとは、人との距離を示すときに、この記事では、

垂直関係/水平関係:上下関係(上司と部下、先輩と後輩、年上と年下など)の有無
親密関係/疎遠関係:友好関係の有無

と呼んでいます。
例えば、佐野さんとAぇのメンバーであれば、垂直かつ親密関係、ってなかんじです。


語句の説明はこんなかんじ。次に、これまでにどんな研究が行われてきたかを紹介します。


まず、ダウンシフトに関する先行研究。
これは「(同等)初対面二者間会話」を扱ったものが多いです。
いうならば、「水平で疎遠な二者の会話」です。
会話の初めはお互いに敬語使用率が高く、会話が進むにつれてダウンシフトしやすく、タメ語使用が増えてくる、という結果がいわれます。その際のダウンシフトの効果としては、心的距離の縮小緊張緩和、が指摘されています。

(わかりやすい例が、みんな大好き『スカーレット』の喜美子と八郎ですね…。私はあの2人がお付き合いを始める前のあのソワソワする期間、どちらかがタメ語を使うたびに「ダウンシフトした…!!!」と盛り上がっていました。彼らはスタイルシフトによってものすごく上手に心的距離を調節していました。主観ですが。この話題で1時間語れる。)

また、ダウンシフトしやすい発話、ダウンシフトしづらい発話、というのを指摘した研究もあります。
まだそれほど親密ではない相手との会話で突然「昨日何してた?」って聞かれたら、ちょっと、え?ってなる人も多いんじゃないでしょうか。私ならなる。怖、ってなる。
逆に、「昨日なにしてたっけなあ」って発話なら、タメ語ではあるけれど初対面でも許容できるかなと感じる人が多いと思います。
こんなふうに、独り言っぽい発話や自分に関する発話であれば、疎遠関係であってもダウンシフトしやすい一方で、質問や命令のような相手に訴えかける、相手を巻き込むような発話は働きかけが強く、心的距離がまだ縮まり切っていない相手に対してはダウンシフトをしづらい、と指摘されます(発話形式でも発話内容でも相手に踏み込みまくるかんじになってしまうので、相手のネガティブフェイスを侵害する可能性が出てくるのです)。

とはいえ、全部が全部こういう傾向がみられるわけじゃないよ、例外もあるよ、とも先行研究は言っています。そりゃそうだ。


ちょっと視点を変えて、次は冗談を伝えるときのスタイルシフト、に関する先行研究を紹介します。
普段タメ語同士で会話している二者間会話の中で、冗談を言うときにスタイルシフトを起こしている、という分析結果がみられることがあります。わざと敬語を使ってみたり、キャラクターになりきった話し方をしたりすることで、ユーモアを生み出す、というわけです。
このとき、敬語を使用したからといって心的距離が離れているとか、緊張感を持たせるとか、そういった効果はもちろんなく、「いま私冗談言ってるぜ!ほら普段と違うでしょ!」っていうのを発話スタイルで表していると考えられます。また、こういった場合、前後にポーズをとったり笑いをはさんだりすることもよく観察されると指摘されています。


最後にもうひとつご紹介。
学校の先生たち同士の会話を観察した研究があります。ここでは、冗談を言うときや相手の冗談にノるときはタメ語を使い、仕事の内容を話すときや、冗談の会話を本筋に戻すときに敬語を使う傾向がある、ということを指摘しています。日常会話的に、そんなん当たり前やん、って思う方もいるかもしれませんが、ここから、敬語のもつofficialさ、formalさタメ語のもつunofficialさ、メインから逸脱している、といった性質を話者が認識していることがわかります。



あーーーーーーー先行研究紹介おわり!
みんな帰ってきてくださーーーーーーい!

さあ、ここまで読まれた方、気づきましたでしょうか。

そう、私が知りたい、「垂直かつ親密関係」のダウンシフトを扱った先行研究が、ない

そうなったら、自分でやるしかないよねえ。

ということでようやく始まります私の研究。


●扱ったデータについて。

今回扱ったデータは大きく分けて
1)2者間会話(さのすえ感謝電話/さのちぇ感謝電話)
2)3者間会話(アフター関バリ2回分)
3)6者間会話(コスプレ塾ワンちゃん4回分/大工さん4回分)
に分かれています。とはいえ人数の差については深くは触れていません(おい)。

データの選考理由は
佐野さんが強烈なキャラ付けなく、素に近い状態でしゃべっていること
です。コスプレはね…選ぶの難しかったよ…。

あ、あとこのあと具体例とか出てくるんですが、一応卒論は匿名でやっていたので、年齢順にA,B,C,D,E,Fって名前にしてます。佐野さんはF。


●分析方法。

どうやって分析したか、ですが、これは完全私のオリジナルなので、それ偏り出るんじゃね?って思ったらツッコんでください。

まずは佐野さんの発話の中から完全文(言い切り文)を抜き出します。
ここで「〜〜と思って」とか「〜〜だけど」といった中途終了発話文や、「ジャンプしたら無重力」「キャベツ」といった名詞句のみの発話は除外します。なぜなら敬語かタメ語かわからんから!
倒置が起こっているような発話は、倒置させていない状態で完全文であれば採用します。

次に抜き出した完全文を、文末表現をもとに敬語かタメ語かに分類します。
(比較のために敬語も分類をおこなっていきます)

2)と3)に関しては、その発話が誰かひとりに向けて言った発話なのか、全体に向けて言った発話なのかを分けます。

最後に、それらの発話を、内容をもとに以下の7つの分類に振り分けていきます。これがむずい。

(a) 同意・挨拶(相手からの反応を求めないもの)
(b) 自分に関する内容
(c) 第三者・場面に関する内容(内容が自分にも聞き手にも関係しない)
(d) 聞き手に関する内容
(e) 冗談(ボケもツッコミも含む、とりあえずふざけてるとき)
(f) 質問・確認(上昇イントネーション、相手からの返答を期待するもの)
(g) 提案・命令(相手からの返答や行為を期待するもの)

この7つの分類については、発話内容がどれだけ相手に影響を与えるか、を基準に影響力の弱いものから強いものを並べた、つもりです。
もし、初対面会話であれば、相手への影響力が小さい、項目の前半にあたる発話でのタメ語使用が多いはず、っていうかんじ。


●結果。

結果です。とりあえずこの表をご覧ください。

f:id:Yurie_pon:20210202103850p:plain
佐野さんの敬語/タメ語の使用回数一覧


はい。
お気づきでしょうか。
あんまりまとまりがないんです。

量的な傾向が出ないじゃんか!!!!!!
と私は一時的に荒れました。晶哉ちゃんめ、もっとわかりやすくタメ語使ってくれよ…と恨みかけました(ごめん嘘です)。

とりあえずこの表を見てわかる範囲の分析を2箇所だけしていきます。

(a)同意、あいさつ
この項目、圧倒的に敬語使用が多いんですよね。
でもこれって、相手からの返事を求めるわけでもないし、影響力の低い発話なので、先行研究的に言えば"ダウンシフトしやすい"はずなんです。
なんででしょう…というのは、あとの分析をしてから考えてみることにします。

(g)提案・命令
これも、圧倒的な敬語使用率
こっちは先行研究どおりといえます。
冗談めいた命令などは(e)に入ってるので、ここに含まれるのはあくまで佐野さん対メンバーという関係性での会話。なので、それで急に「せーやくん塩とって」とか言ってたら、え、家族?みたいになりそうですよね(完全にイメージが食卓になってしもた)。
敬語使用が多い理由、ここは、先行研究と同じく、相手への働きかけが強いからと言えるでしょう。


この2項目以外はパッとしないので、より深く内容を見ていくことにします!


(b)自分に関する内容
これは、相手への影響力が小さい、先行研究的にいえば"ダウンシフトしやすい"ものなのでタメ語使用が多いと考えられるんですが、数値を見ると敬語使用もまあまあ見られるのです。
じゃあその使い分けってあるんかいな、と、中身を見ていくとですね、

タメ語での自分に関する内容発話は、ひとり言的あってもなくても会話が進んでいくもの、という特徴あり。

(例1) さのすえ感謝電話の冒頭。6行目がダウンシフトしている。
01: A  もしもし.
    <Hello?>
02:   (0.7)
03: F  今 (0.5)大丈夫すか?
    <Is this a good time to talk?>
04:   (1.0)
05: A  うん. (0.3) 大丈夫.
    <Yeah. It’s okey.>
06: F→ よかった.
    <That’s good.>
07: A  どした?
    <What’s up?>
08: F  なにしてました?
    <What are you doing now?>
https://j-island.net/movie/play/id/5024

3行目や8行目の質問文は敬語発話であるのに対して、6行目だけダウンシフトしています。
ここで、6行目の「よかった」があってもなくても会話は大きな問題なく進んでいきます。

(ところで、卒論英語で書いていたのであえてそのままスクリプト置いていきますね…英訳できてるかな…有識者さん教えて……)


一方、敬語での自分に関する内容発話は、相手からの質問に対する答えなど、その会話を展開するために必須な内容、という特徴あり。

(例2)さのちぇ感謝電話。
(Before this conversation, D asks B what he is doing recently at home.)
01: D  何してる? 逆に.
    <What do you do recently?>
02:   (0.7)
03: F  僕, (1.2) ドラム,
    <I, practice drum,>
04:   (0.5)
05: D  うん.
    <Yup.>
06:   (0.5)
07: F→ オンラインレッスン (.) 受けてます.
    <I’m taking an online lesson.>
08: D  オンラインレッスンしてん. (surprisingly)
    <Are you taking an online lesson?>
09:   (1.5)
10: F→ めっちゃええっすよ めっちゃ楽しいっす.
    <It’s very good. Very exciting.>
https://j-island.net/movie/play/id/5190

7行目、10行目はD(たいちぇ)の質問に対する返答という発話行為を行っているため、なくなってしまうと会話が成り立たなくなってしまう要素。こういったときは、自分のことを語るとしても敬語使用のままであることが多くみられました。


(d)聞き手に関する内容
これは、相手のことを直接言及する内容なので、比較的影響力が大きい、"ダウンシフトしづらい"ものと考えられます。
でも数値を見てみると、「3者間/6者間会話で」「全体に向けての発話」のとき、タメ語使用率が高めなんです。
(実は6者間会話に関してはリモートか対面かでもわけて分析したんですが、リモートだけで見るとさらにタメ語率が高くなってますここ)

これも、タメ語使用がしやすい理由としては、(b)と同じく、ひとり言的、あってもなくても会話が進んでいく、という特徴があるためだと考えられます。
さらにもうひとつ、このとき、「会話参加者」という立場から一歩引いて「視聴者(の声の代弁者)」のように感じられる場面が多いんです。
…まあ、タメ語だからそうかんじるのか、本人がそれを意識してるからタメ語になるのか、どっちが先かわかんないんですけどね……。

(例3)大工さん(2)の冒頭。
01: E  空き時間で, ちょっと, さっき, 肉弁当を =
    <Because I ate a meat lunch … >
02: E  =食べさせていただいたので,
    < … during an intermission a while ago,>
03: E  そのぶん 働いて来ようと.
    <so, I will work more for that.>
04: C  [(laughing)]
05: B  [(laughing)]
06: C  休憩の代償を =
    <In return for that lunch …>
07: E  =めちゃめちゃ美味しかったんでちょっと, そのぶん.
    <It was so delicious that I have to do more for that.>
08:   (0.5)
09: C  じゃあもう, [ sss  ト]ップバッター頑張ってくださいそれは.
    <Okay, in that case, do your best as the first person.>
10: F→       [えらいな]
    <Well done!>
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5ef02cab-61f8-45ef-a9cf-6aeb4f50d390

(この肉弁当のくだり真剣な顔して英訳するのめっちゃアホらしかったです…ニュアンスが伝わらねえんだ……私絶対に小島さんのAぇ!!!!!!の文章の英訳だけはできない…)

ここで、メインの会話はCとE(もんビバ)で、佐野さんは傍観者的立場をとっています。また、この10行目の発話に対する反応も特にないですが、それが違和感なく受け入れられています。


(e)冗談(とりあえずふざけてる発話)
これは、影響力云々の前に、この発話ができるかどうか(親密じゃなかったら冗談言えないもんね)という視点もありますし、冗談言えるなら親密だしunofficialだしタメ語でしゃべるんじゃ?という視点もありますし、そもそも他の6項目となんかちょっと雰囲気違いますし、一緒にこれ分析すべきじゃなかったんじゃ?とも思いますし、

おすし🍣

はい。

とりあえず見ていきます。

冗談発話、タメ語が多めだけど意外と敬語のままのときもあります。
タメ語を使う理由は、タメ語話者が冗談のときにスタイルシフトをすると指摘していた先行研究のとおり(現象としては逆)だと考えられます。「この発話冗談だからね!」という合図を発話のスタイルによって行っているのでしょう。

(例4)正門さんのタンバリン大工終了後。
(C finishes his performance and returns from a studio putting a white mask.)
01: C  お疲れっした.
    <I'm back.>
02: F→ 仮面つけてよ.
    <Put your mask.>
03: A  仮面つけてって.
    <Put your mask!>
04: B  (laughing)
05: F  仮面つけてくださいよ.
    <Please put a mask.>
06: C  つけとるわ!
    <I'm putting it!>
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5efd8e55-8769-404d-941b-6bb048a20370

2行目で命令的発話をタメ語でしていますが、ここは実際と異なることをわざと言っているので冗談と判断しています。5行目で同じ内容を敬語で言っていますが、最初の発話をダウンシフトすることで冗談であることを示すことに成功した(3行目でせーやくんノッてくれたから成功と言える)から、5行目ではスタイルだけはもとに戻したのだと考えられます。

一方で、敬語を使用した冗談発話がどういうときに見られるかというと、 “わざとらしく垂直関係を生み出すような冗談”のときであるといえます。

(例5)小島さんのタンバリン大工終了後。
01: C  リーダー [よかった]
    <Leader, it was nice.>
02: B       [よかった]
    <Nice.>
03: E  つ (.)↑かれるねえこれやっぱ(affectedly)
    <Exhausted. This segment always makes me tired.>
04: F  [どうやって-]
    <How did you … >
05: D  [タンバリン]大工俺のや-=
    <Tambourine Carpenter is my idea.>
06: F→ =どうやって思いついたんですかあれ.
    <How did you come up with that character?>
07: E  え?
    <What?>
08: D  [タンバリン-]
    <Tambourine … >
09: F→ [どうやって]思いついたんですか.
    <How did you come up with that?>
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5efd8e55-8769-404d-941b-6bb048a20370

わざとらしく疲れている小島さんに悪ノリして、9行目では敬語を使用することで“小島さんを労わる後輩感”を出していると考えらます。

…いや、正直佐野さんのユーモアセンスを完全に分析する自信はないので、あくまで言語現象だけ見た場合です!正解の解釈はわかりません!


そんなわけで、数値的にパッと見特徴がわからなくても、中身まで見てみると傾向が見えてきたりします。楽しい。


ここで改めて全体の結果を振り返ると、垂直かつ親密関係におけるダウンシフトに関してこんな結論が言えるのではないかなあ、と思います。

初対面会話でのダウンシフトとは傾向が違う!
(そりゃそうだよ、だってもともと親密関係なんだから、心的距離の縮小効果を期待したダウンシフトをする必要ないもん)

ダウンシフトするときの会話では、聞き手との実際の関係性(=先輩と後輩)以外の要素を強調しようとしている!で、それを強調することによって発話内容を円滑に伝達しようとしていると考えられる。
(冗談発話では「遊び仲間」、誰かに言及するときは「視聴者(の代弁者)」、独り言的発話はそもそも聞き手を意識していないため先輩と後輩という関係性が生まれようがない)

逆に、実際の関係性を優先する発話の時には、相手への影響力の有無にかかわらずダウンシフトしづらい。
(最初、(a)で敬語使用率が高かったのはこれが理由だと思います。挨拶とかって、形式的でもあるし、その形式によって両者の関係性を色濃く示すため、ダウンシフトしたら失礼にあたってしまう可能性があるのかと。)



ふう。

ふう~~~~~~~~~~~~~~~~。
これが私の卒論内容でした!
晶哉ちゃん、Aぇのみんな、ありがとう。韓国の土下座しちゃう。



こっからは完全主観なおまけのお話。


おまけ①この結果を見た感想
佐野さんはよく、バラエティでの立ち回りがうまいってメンバーからも言われてるけど、まさにこのタメ語使用の傾向がそのとおりだなと思ったんです。
タメ語を使うことで自分のその場その場での立ち位置をわかりやすく示しているというか。
考えすぎかなあ。

おまけ②最近の佐野さんのダウンシフト
ここまで詳しく分析はできてないけれど、最近のダウンシフト、このときとはちょっと違ってきている気がします。
例えばコスプレ塾のどうぶつ編(2)の前編。末澤ウサギのニンジン早食いの感想述べるときの佐野さんの発話。

「全然めっちゃ普通に鳴くか、まったく音鳴らんくなるか、の、二択やったのよ

この発話。
ここでダウンシフトするんや!って初見のときはびっくりしてました。
これって、特にキャラクターになりきってるわけでもない、佐野晶哉のまんま、メンバーに向けた、発話だと思うんですよ。で、冗談要素もなく(いや、ないとまでは言い切れないけど)。分類的に言うと末澤ウサギについての描写だから(d)に含まれるけれど、メンバーの視線が佐野さんに向いているし、聞き手への呼びかけの効果がある終助詞「よ」がついているし、視聴者の代弁とも思えない。完璧なまでの“ただのメインの発話”なんですよね。
これは……どう分析したらいいのかなあ、と思ってます。でもなんとなく感じているのは、この傾向が続くようであれば、これからどんどんタメ語増えていくのかなあ、っていうこと。なんかちょっと寂しい気持ちがしています。全然、いいんだけど、ちょっと寂しい。


ほんとはみっつめのおまけで、先日(2021/01/30)のらじらー内コーナー「晶哉、タメ語で喋ろうや」を分析した結果を書こうかと思ったのですが、まだ分析途中なのと、あんまりにも長くなるのでまた別の機会に書きます。今週中には書きたいなあ(自分を追い詰めていくスタイル)。


●おわりに。

……ここまで読んでくださった方、ほんまにありがとうございます。
長かったでしょ…私も疲れたよ……。
もちろん至らない点、無意識のうちに偏った視点で分析しているところがあるかもしれません。お手柔らかに。でも気づいたことがあればご意見ほしいです。
ひとまず書き始めた目的、自分が理解する、は達成したので、あとは読んでくださる方に伝わるかな…ということだけが課題です。
(伝わる≠納得してもらう、です!これが正解だぞと押し付けるつもりはありません。読んでくださった方が、こういう分析方法も一理あるなあ、くらいに思って下さったら嬉しいです😊)

もしなんかご意見とかご質問とかご指摘とかあったらマシュマロとかコメントください!



ではまた。気が向いたときに、思い出したようにつらつらと書きに来ます。
ありがとうございました!



[参考文献一覧]
Allott Nicholas (2014)『語用論キーターム事典』開拓社, 東京
Brown,P & Levinson, S.C. (1987) Politeness: some universals in language usage. Cambridge University Press, Cambridge.
福池秋水(2018)「共通語と首都圏方言のスタイルシフトに関する一考察:現代日本漫画を題材に」関西外国語大学関西外国語大学短期大学部『研究論集』107, 123-138
Geyer Naomi (2008) “Interpersonal functions of style shift: The use of plain and masu forms in faculty meetings”, Style Shifting in Japanese, John Benjamins Publishing, 39-70, Amsterdam.
Kitamura Koichiro (2019) “An Analysis of Linguistic Politeness in Japanese: A case Study on the Management of Polite Form among Young Japanese People in Australia”, Global communication studies 8, 137-158. Chiba.
大津友美(2007)「会話における冗談のコミュニケーション特徴:スタイルシフトによる冗談の場合」『社会言語科学』10巻1号, 45-55, 東京
嶋原耕一(2015)「接触場面の同等初対面会話におけるダウンシフトについて-聞き手に対する働きかけの強さという観点から-」『留学生教育』47-56, 東京
滝浦真人(2005)『日本の敬語論 - ポライトネス理論からの再検討』大修館書店, 東京
UX DAYS TOKYO(2018)「ポライトネス理論 UX TIMES」(accessed 2021/01/04)
https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/politeness-theory/
和田朋子(2020)『[増補改訂版]はじめての英語論文 引ける・使える パターン表現&文例集』すばる舎, 東京
ユン・ドングン(2014)「日本語のスピーチレベルシフト実例分析-ドラマスクリプトを用いて-」『一橋日本語教育研究』2, 107-118, 東京

Source of examples (accessed 2021/01/04)
https://j-island.net/movie/play/id/5024
https://j-island.net/movie/play/id/5190
https://j-island.net/movie/play/id/5243
https://j-island.net/movie/play/id/5630
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e4fb4e7-d13c-4002-ae40-defa3caa2adb
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e4fb4ef-681a-4f97-8ea8-c0a43042572c
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e61ba27-22a0-4d10-8ea5-42dc5fb9c198
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e61ba41-5466-483e-9e54-9cd772d22639
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5ef02cab-61f8-45ef-a9cf-6aeb4f50d390
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5ef02cbd-f8cb-4186-806c-4cfd3fc078ce
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5efd8e43-159d-4f16-8b46-1ddf6f102ad2
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5efd8e55-8769-404d-941b-6bb048a20370
※You can access them until March 31, 2021.

なんか、GYAOのリンクがうまく飛ばないかも…コピペしたら見られると思います…